この一枚この一曲
この一枚、この一曲 これまで聴いてきた音楽の中で、とくに気に入っているアルバム、曲の紹介。
自分では、ジャンルにとらわれることなくどんな音楽も聴いてみようという姿勢で来たつもりです
が、どうしても好みが片よってしまうのは仕方のないこと。
ご覧いただいて、何かの参考になればさいわいです。
ジャケット写真については、著作権問題が頭にあって最後までためらったのですが、一社ずつ
掲載許可をとるというのも現実には難しいので、あえて許可なしで掲載しました。
著作権、肖像権については、今後も検討するつもりです(「効能書」のページで触れる予定)。
 
最終更新日 2006/06/03

             
◆ 第1回  山崎ハコ 『幻想旅行』 『幻想旅行 II』 LP 1981/82 ( '04/12/18 up )
  『幻想旅行』 『幻想旅行 II』 山崎ハコ、デビュー後6年目のアルバム。
'81年11月 『幻想旅行』、翌年4月 『幻想旅行 II』 と、続けてリリース。
楽曲内容、歌唱ともに、ハコの最高傑作の一つだと思う。
とにかく聴いてほしい、と言いたいところだが、CDで再発売されていないため入手困難なのが残念。

一部の曲はベストアルバムで聴くことができる。
『 Dear My Songs 』(2001年発売、2枚組)に「ばいばいことば」「さくら」「旅路」「ペンフレンド」の4曲、『山崎ハコ BEST 』(2002年発売)に「スコール」が収録されている。
◆ 第2回  高田渡 他 『貘 詩人・山之口貘をうたう』 CD 1999 ( '05/8/15-20 up )
  『貘 詩人・山之口貘をうたう』 沖縄出身の詩人 山之口貘(やまのぐち・ばく/1903-1963)の詩に、高田渡 他が作曲し、大工哲弘、佐渡山豊、石垣勝治、嘉手苅林次、大島保克ら、沖縄の歌い手たちと高田渡が歌う。
「生活の柄」と「座蒲団」の2曲は、高田渡ファンにおなじみの歌。
他にも「告別式」「鮪に鰯」「たぬき」「会話」など、味のある歌が満載されている(全18曲)。
ぼくが高田渡のライブを初めて見たのは、2001年8月、真鶴海岸(神奈川県)で開かれた野外コンサートだったが、そのライブで高田渡の歌う「生活の柄」を聴いた時の不思議な印象は忘れられない。
◆ 第3回  上々颱風 「鳥の歌」 CD 1996 ( '05/9/4-12 up )
  「鳥の歌」 シングル盤 〝もしも鳥に生まれたなら・・・〟
こんな歌詞で始まると言ったら、どんな歌を想像するだろうか。
上々颱風の6枚目のアルバム『ためごま』(1996/7)に収録され、シングルカットされている名曲「鳥の歌」。
作詞・作曲はリーダーの紅龍(こうりゅう)、リードボーカルは、西川郷子(サトちゃん)である。
恥ずかしくなるほど純情でシンプルな詩だが、サトちゃんの歌唱は、何度聴いても泣ける。
残念なことに、音源のCDは入手困難(アルバム、シングルともに)。
聴きたくなった人は、上々颱風のライブへぜひどうぞ。
◆ その他 ◆
  ■ 中島みゆき 『EAST ASIA』 より 「二隻の舟」 CD 1992  
  『EAST ASIA』 たった一つの短い歌に勇気づけられることがある。
中島みゆきの「二隻の舟(にそうのふね)」という歌がそれだった。
〝おまえとわたしは たとえば二隻の舟〟というサビの部分に、ぼくはいつも感動する。
〝おまえとわたし〟は〝暗い海を渡ってゆく ひとつひとつの舟〟だという。
あきらかに女性の立場で歌いながら、男性を〝おまえ〟と呼ぶ雄雄しさ。
中島みゆきの歌を「捨てられた女の嘆き節」と捉える向きも多いが、とんでもない。そんなヤワなもんじゃない。
  ■ 安里勇 『海人』 (ウミンチュー) ~八重山情唄~ CD 2001  
  『海人』 安里勇という八重山民謡の歌い手を知ったのは、星野道夫の著作だったか、池澤夏樹の著作だったか。 それはもう忘れてしまったが、このアルバムを聴いていると、まだ行ったこともない八重山の島の浜辺で波の音を聞いているような、ゆったりとした気分になれる。
聴き込むほどに味わいが深まっていく、ぼくにとってそういうアルバム。
  ■ 大工哲弘 『OKINAWA JINTA』 CD 1994  
  『OKINAWA JINTA』 大工哲弘も、沖縄・八重山諸島石垣島の出身である。
八重山や奄美は島歌の宝庫と言われているが、この人たちや、元ちとせの歌を聴いていると、ことばの正しい意味での〝伝統〟の凄さを感じる。
このアルバムは、「ジンタ」と呼ばれる日本の大衆音楽の伝統に根ざした楽器編成、アレンジの歌を収めた一枚。
「ジンタ」は、別のことばで言うと「チンドン・ミュージック」なのだが、同じような音楽指向を持つバンド〝ソウル・フラワー・・・〟の大熊亘と、ジャズ畑のサックス奏者・梅津和時が参加している。
姉妹アルバムとして『JINTA INTERNATIONALE』(1996年) があり、こちらもいい。
  ■ 安東ウメ子/OKI 『ウポポ・サンケ』 CD 2003  
  『ウポポ・サンケ』 沖縄に古くからの音楽・民謡の伝統があるとすれば、北の大地には、先住民族アイヌの音楽があった。 アイヌの人たちは複雑な構造の楽器を持たず、文字も持たなかったけれど、日々の暮らしに根ざした歌と踊り、口承文化を持っていた。
〝ウポポ〟(座り歌)と〝リムセ〟(踊り歌)と呼ばれる歌や、知里幸恵(1903-1922)の『アイヌ神謡集』で名高い「神謡」(神のユーカラ=kamuy-yukar)、いわゆる「ユーカラ」(英雄叙事詩、人間のユーカラ)、などがそれである。
安東ウメ子は、〝ウポポ〟と〝ムックリ〟(アイヌの伝統楽器である口琴)の名手。幼少時代からアイヌ語や伝統的な文化に親しみ、帯広地方におけるアイヌ民族文化の代表的な継承者の一人だったが、2004年7月15日、惜しくも亡くなった。
このアルバムは、OKIというアイヌの血筋を引く若いミュージシャン(樺太アイヌの伝統楽器・トンコリの継承者)がプロデュースした、安東ウメ子の2枚のアルバムの一つ(もう一枚は『IHUNKE』)。
OKIも演奏参加している。 深い感動を与える一枚である。
  ■ 英珠 『Songs』 CD 2003  
  『Songs』 英珠(えいしゅ)は、台湾系の血を引く東京生まれの若手女性シンガー。
このアルバムは、上々颱風の西村直樹と渡野辺マントが参加すると聞いて、発売前から楽しみにしていたが、掘り出し物だった。
英語歌詞のポピュラー・ソング集だが、衒いのない、のびやかな歌唱。
英珠の声がじつにいい。 ジャズ・ボーカル・ファンにもお奨めの一枚。
渡野辺マントによるリズム・アレンジも渋い。 永田雅代のピアノ、西村直樹のベース、渡野辺マントのドラムス/パーカッション、すべてよし。
'60~'80年代にヒットした馴染みのある曲目ばかりで、聴きやすい。
「見つめていたい」(ポリス)/「プライヴェート・アイズ」(ホール&オーツ)/「ブリッジス」(ミルトン・ナシメント)/「雨にぬれても」(バート・バカラック)/「レイトリー」(スティービー・ワンダー)/「雨をみたかい」(CCR)/「グルーヴィン」(ヤング・ラスカルズ)/「ホールド・ミー・ナウ」(トンプソン・ツインズ)/「テイク・ミー・トゥー・ザ・リヴァー」(アル・グリーン)/「サークル・ゲーム」(ジョニ・ミッチェル)。 以上、10曲。
どうです。 聴いてみたくなるでしょ?
岸健二郎プロデュース。 toeraレーベルから発売中。
 → toera  http://www.h3.dion.ne.jp/~toera/
  ■ 浅川マキ 『MAKI LIVE』 LP 1972  
  『MAKI LIVE』 「資料蔵・人名編」の浅川マキの項でも触れたが、ぼくにとって思い出のライブ録音である。
1971年の大晦日。 新宿紀伊国屋ホールは熱気が溢れていた。
客席で煙草をふかしている輩などもいて(はた迷惑な話だが)、今では考えられないようなライブだった。
浅川マキ(vo)、今田勝(p)、荻原信義(g)、稲葉国光(b)、つのだひろ(ds)、杉浦芳博(g)、他。
収録曲は「別れ」「赤い橋」「にぎわい」「ちっちゃな時から」「朝日樓(朝日のあたる家)」「かもめ」「少年」「死春記」「ピアニストを撃て」「オールド・レインコート」「ガソリン・アレイ」「さかみち」、以上12曲。
「ガソリン・アレイ」での つのだひろ のドラムスが圧巻。
  ■ ソウル・フラワー・ユニオン
  『エレクトロ・アジール・バップ』
CD 1996  
  『エレクトロ・アジール・バップ』 〝ソウル・フラワー・ユニオン〟〝ソウル・フラワー・モノノケ・サミット〟という奇妙な名前のバンドを知ったきっかけが何だったのか、もう忘れてしまったが、ぼくのことだから、上々颱風の西川郷子と後藤まさるが参加していると聞いて買ったのかもしれない。 いやはや、ミーハーな動機だ。
初めてCDを聴いたときは、とにかく強烈な印象の音楽だった。
ショックを受けたと言ってもいい。
このアルバムに収録されている「満月の夕(ゆうべ)」が出来た背景(神戸の震災当時の活動)を知ったのも、ずいぶん後のことだ。
「エエジャナイカ」「海行かば山行かば踊るかばね」「闇夜の太陽」「満月の夕」などのクレジットに、NISHIKAWA SATOKO の名前を見るとうれしくなるのは、やっぱり不純な聴き方かなぁ・・・。
  ■ ヴィタ・ノーヴァ 『SHINONOME』 より
  西川郷子 「黄金の木の実」
CD 1997  
  『SHINONOME』 上々颱風(しゃんしゃんたいふーん)については、書きたいことが山ほどあるのだが、それはいずれ別のところで展開してみたい。
さて、上々颱風のリード・ボーカルの一人、西川郷子である。
このバンドの二人の女性ボーカル、白崎映美と西川郷子は好対照。
美形で背の高い(それほどでもないがステージでは大きく見える)エミちゃんと、ちっちゃくて愛嬌のある顔立ちのサトちゃん。
ファンの間でもどちらかの熱心なファンに別れる傾向があって、おかしい。
もう一人、キーボードの猪野陽子のファンも多い。 この三人娘(?)で持っているバンドという噂も・・・。
脱線してしまったが、その西川郷子は、澄んだ高音の歌声が魅力である。
これほどの歌唱力を持ったボーカリストが、まだ一枚もソロ・アルバムを出していないのはもったいないことだ。
この「黄金の木の実(こがねのきのみ)」という歌には、上々颱風の楽曲で聴く彼女のボーカルの良さとは、またひと味ちがう魅力がある。
工藤順子の詞、上野洋子の曲。 ちょっと不思議な歌の世界だが、それもまたいい。
  ■ 新井英一 『オールドファッション・ラヴソング』 CD 1997  
  『オールドファッション・ラヴソング』 新井英一が歌う、歌謡曲のカヴァー曲集。
ここで言う「歌謡曲」とは、日本のポピュラー・ソング(大衆歌)という意味である。 曲目を紹介しよう。
「遠くへ行きたい」「黒の舟唄」「かもめ」「流浪の旅」「ゴンドラの唄」「石狩挽歌」「ヨイトマケの唄」「ガラスのジョニー」「ともしび」「イムジン江」「明日は明日の風が吹く」「港が見える丘」「人を恋うる歌」「青空(MY BLUE HEAVEN)」、以上14曲。
「かもめ」は浅川マキが歌っているあの歌。 他は説明不要、ポピュラーな歌ばかりだ。
新井英一がCDのブックレットに寄せた一文に、こんなことが書いてある。

「 人間の命にとって一曲の歌よりも一個のにぎりめしのほうが大事である。その事は百も承知の上で唄を歌っている。しかし心の中は食いものよりも歌やメロディでうるおせる時がある。・・・ 」

太く艶のある彼の歌声によって、昭和の歌謡曲がブルースのように響く。 こころに沁みるアルバムである。
  ■ Nanci Griffith
  『OTHER VOICES|OTHER ROOMS』
CD 1992  
  『OTHER VOICES|OTHER ROOMS』 CD店に行くと、妙に気になるアルバムがあるものだ。
CDジャケットがじっとこちらを見つめて、「私を聴いて(俺を聴いてくれ)」と言っているのである。
このアルバムも、そんな感じで手にしたものである。
ナンシー・グリフィスという歌い手について、こちらの予備知識はゼロ。
ただ、ジャケットと帯のコピーに引かれて買ってしまったのだが、得てしてこういうアルバムに拾い物(と言っては失礼だが)が多い。
ジャケットの女性(ナンシー自身)がなかなかの美形である。 本を手にしているのは何故?
後で知ったのだが、アルバムタイトルにもなっている「遠い声、遠い部屋」は、トルーマン・カポーティの小説(この小説も後で読んだが面白かった)。 彼女が持っているのはこの本だった。 なかなか洒落ているではないか。
内容は、いわゆるカヴァー曲集である。
「ロッキーを越えて」(ケイト・ウルフ)/「スペイン革のブーツ」(ボブ・ディラン)/「ウィモエ(ライオンは寝ている)」など名曲揃い(全17曲)。
共演者が凄い。 ボブ・ディランがハーモニカを吹き(スペイン革のブーツ)、エミルー・ハリスがバックコーラスを歌い(ロッキーを越えて)、他にも、アーロ・ガスリー、チェット・アトキンス、インディゴ・ガールズ、等々が参加。
上質の一枚、ぼくの永遠の愛聴盤である。
  ■ Hampton Hawes
  『The Green Leaves of Summer』
LP/CD 1964  
  『The Green Leaves of Summer』 ハンプトン・ホーズ(1928-1977)は、戦後の一時期、GIとして日本にも滞在し、秋吉敏子など日本のミュージシャンにも影響を与えたピアニスト。
ブルース色の濃い、独特のノリを持った演奏スタイルがいい。
ぼくは大好きである。
1964年に録音された、このトリオ演奏アルバムの中でも、ぼくのお気に入りは「グリーン・リーヴス・オブ・サマー」というこの一曲。
ジョン・ウェイン製作・監督・主演の映画「アラモ」の主題曲といえばすぐにわかる、あの曲である。
ゆっくりしたテンポのイントロから、テーマの提示、それに続く変奏と、しだいに〝うねり〟を加えていくようなドライブ感がたまらない。
彼は、1950年代の終わりから60年代初めにかけての数年間、麻薬のために逮捕・拘置(麻薬療養所)されて、演奏活動から遠ざかっており、このアルバムは、その復帰後最初の作品だという。
ジャケット写真がいいね。
  ■ Eric Dolphy 『IN EUROPE Vol.1~3』 LP/CD 1961  
  『IN EUROPE Vol.1』 『IN EUROPE Vol.2』 『IN EUROPE Vol.3』 エリック・ドルフィー(1928-1964)は、映画「真夏の夜のジャズ」にその姿を見ることができる。 チコ・ハミルトンのグループにいた頃('58~'59年)である。 その後、チャールス・ミンガス(ベーシスト)のグループに参加。
オーネット・コールマン(アルトサックス奏者)とも共演した。
ミンガスのグループを抜けた後、ブッカー・リトル(トランペット)、マル・ウォルドロン(ピアノ)を擁した自己の五重奏団を結成。 '61年7月には、有名な「ファイブ・スポット」でのライブ録音(3枚)を残している。
'61年~'62年には、ジョン・コルトレーン(テナーサックス奏者)のグループにも参加していた。
'64年、ミンガスとヨーロッパに渡り、ミンガスの帰国後もそのままヨーロッパに残って永住も考えていたというが、ベルリンで糖尿病のために急死した。 36歳という若さだった。
死の直前、後に『LAST DATE』と名付けられたライブ録音に残された彼の言葉は有名だ。

 When you hear music, in the air. You can never capture it again.

さて、この『IN EUROPE』と名付けられた3枚のライブ盤は、短命に終わったブッカー・リトルとの五重奏団解散後、'61年の秋に単身で渡欧し、デンマークの演奏家たちとコペンハーゲンで行なったライブ録音である。
ドルフィーは、アルトサックスの他に、フルートとバス・クラリネットを演奏した人だが、このアルバムの中でも3種類の楽器を持ち替えて、白熱したライブ演奏を展開している。
無名と言っていいデンマークの演奏家たちが、ドルフィーの演奏に刺激されて、じつにいい演奏をしている。 これぞジャズの醍醐味である。
バス・クラリネットによるソロ演奏「GOD BLESS THE CHILD」は、何度聴いても震える。
  ■ Anne-Sophie Mutter (Violin)
  Mozart Violin Concerto No.3 & 5
LP 1978  
  『Mozart Violin Concerto No.3&5』 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲が好きだ。
なかでも、アンネ・ゾフィー・ムターという女性ヴァイオリニストが演奏する、このレコードが気に入っている。 カラヤン指揮、ベルリン・フィルとの共演。
1978年の演奏だが、この時、ムターは弱冠14歳。
カラヤンと向きあったジャケット写真を見ると、まだあどけない少女である。おじいちゃんと孫娘のようなこの二人の写真が、なんとも微笑ましい。
モーツァルトが19歳の時に作曲した5曲のヴァイオリン協奏曲のうち、このレコードには、第3番ト長調(K.216)と、「トルコ風」というニックネームを持つ第5番イ長調(K.219)が収録されている。
カラヤンに見出された天才少女といわれているムターのヴァイオリン演奏は、じつにのびのびとしていて気持ちがいい。
ぼくの愛聴盤である。

ムターは、後に、他の3曲のヴァイオリン協奏曲も録音している。
第1番と協奏交響曲:ネヴィル・マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団/ブルーノ・ジュランナ(ヴィオラ)。
第2番と第4番:リッカルド・ムーティ指揮/フィルハーモニア・オーケストラ。
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